ZAZEN BOYS『すとーりーず』のアートワークをじっ、と見ていたら、ふと「あ、そうか、“落語”なのか」と思った。

ZAZEN BOYSの最新アルバムは、それまでのバンド名+数字のタイトルから変わり、『すとーりーず』となった。 確かに聴いてみると、それぞれの歌・曲からは「すとーりー=物語る事への意識」が前作よりも強く感じられる(わけわからん歌詞や変拍子は相変わらず健在、どころか研ぎ澄まされているぐらいの印象=シングアロング的な楽曲からはとことん離れた位置にある歌・曲という印象だが、確実に何かを「物語っている」)。シャウトが減った歌唱法、日常的な単語の多用(「ポテトサラダ」やら「電球」やら「サンドペーパーやら)などが私にその感覚を抱かせるのだが、ではその「すとーりー」がどこから来ているのか、について考えると、どうも「?」が浮かんでばかりだった。

アートワークを最初見た時、私はそこに描かれているのが「坊主」だと思っていた。頭を丸め、着物を着て、手を合わせながら念仏を唱えている「坊主」。NUMBER GIRL時代の「ナムアミダブツ」から変化が始まった、というイメージに引き摺られていたのだろう。「すとーりー」=「説法」だと思っていた。

しかし、改めてアートワークを見てそこに「マイク」があるのを見つけ、「違うわ、落語家だ、これ」と気付き、そこで(勝手に)腑に落ちたのだった。 「すとーりー」とは「噺」の事で、これはZAZENの「落語」なのだ、と。

物語る印象が増した楽曲群は、その一つ一つが向井秀徳によって語られる「噺」であり、タイトさが更に増した演奏や真骨頂とも言える変拍子、前作やKIMONOSでも見られたシンセなどの導入は、「噺」を彩る「お囃子」なんだと思ったら、『すとーりーず』というアルバムがZAZEN BOYSの大独演会に聴こえてきて、更に楽しくなってしまった。

「笑わせる」という事に主眼を置きながらも、時にはじっくりと話を聞かせたり、聞く者の涙を誘ったり、変幻自在の声色で様々な感情や状況を表して聞き手の心を動かす落語。

『すとーりーず』は、希代の“音楽落語家”が音の色で物語り、聴く者を魅了する、そんな作品だ。

とかなんとか書いてるけども、とにかくかっちょいいんで必聴!!!!

Matsuri Studio ダウンロードページ http://www.mukaishutoku.com/download_stories.html