『色あせてカラフル』のこと。

さて、続けての投稿です。珍しい。ブログを立ち上げておきながらほったらかす、という私にしては。SNSも、最近はてっきり見る専門になってしまっていて、どうにもこうにも自分から発信する気が起きないのですよね。やってることと言ったら、聴いてる音楽のジャケをインスタにアップするぐらいで、もはやbotの域。botほど更新しないけど。

トリウッドスタジオプロジェクト最新作『ぐちゃぐちゃ』の公開を記念して、4/15(土)から1週間限定上映が始まった過去作品の『金星』と『色あせてカラフル』。前回は『金星』について書いたので、今日は『色あせてカラフル』のことをつらつらと書いていきます。

制作は2015年。企画開発は2014年の秋からでした。 監督の横山から最初に出された企画は確か全く別のもので、たいして面白くなかったような気がするんですが(笑)、面談の序盤の方で企画とは別に自身のことを話し始めました。それは過去に関することで、自身にあったこと、その時に感じたことを色々と話してくれたんですが、その内容がとても興味深かったので、それを企画としてまとめてみよう、となりました。後で横山に聞くと「なんでああいう話をあの場でしたのかよくわからない」と言っていたんですが、映画の企画を作る為に自分の中にあるものを深く掘り下げていく、という行為があの話に繋がったのかなと今では思っています。 年末に横山の企画で進めることを決め、2015年の始めから撮影準備を開始。この作品はトリスタの10本目、ということで、まぁ記念すべき作品ではあったのですが、正直な所この時はそこまで意識してませんで(笑)、横山の希望とかも聞きながらまずはキャスティングを始めました。

と、軽い感じで書いてますが、このキャスティングがいつも僕の胃痛の原因になりまして。この作品でもそれは同様で、主人公役をお願いする方がなかなか決まらない中で、他の役の方がどんどん決まっていきました。 まず、企画の趣旨に賛同して下さった田中要次さん。スタッフに決まったことを伝えた時に「おぉー」という声が上がったのを覚えてます。田中さんの事務所の方からご紹介頂いた水間ロンさん。スポーツ万能ながら大学時代の事故で足を悪くした男性の役で、いつも足を引きずっているのですが、その引きずり方をどうするか、そういう人はどういうものを普段身につけているのか、など、色々話し合いながら人物を作っていったのを覚えています。水間さんには『ぐちゃぐちゃ』にもご出演頂きました。 舞台が好きな卒業生から情報をもらってお願いしたのが黒羽麻璃央さん。爽やかでした、とにかく。なんでこんなに爽やかなのかね、ってぐらい。役柄とも相まって、撮影現場では色々と盛り上げて頂きました。 横山からの希望もあってご出演をお願いした落合モトキさんと、事務所の方からご紹介頂いた岩井七世さん。お二人は撮影と近い時期にそれぞれ舞台にご出演もされていたので、その舞台を拝見してお話しさせて頂いたり、そういったことも楽しい思い出として残っています。まぁぶっちゃけ、落合さんがいらっしゃった撮影日は諸事情で現場に居られなかったので、実際の所あんまり話せてないんですけども。 トリウッド・代表の大槻さんから案が出たものの、いやーさすがにご出演頂けないんじゃないか、と少し二の足を踏んでしまったのが研ナオコさん。役どころが「ネギおばさん」と呼ばれている(劇中では呼ばれてないんですが)よくわからん人物ということもあり、ダメ元でお願いしてみた所、田中さんと同様このプロジェクトの趣旨に賛同して下さり、ご出演頂くことが出来ました。現場や作品内ではさすがの存在感。スタッフ達の考えも親身に聞いて下さり、彼らにとってとても良い経験になったと思います。

そして、クランクイン予定日がかなり近づいてきた時期に、主人公役が佐藤玲さんに決まりました。当時はかなり胃がキリキリする日々でしたが、今は、ギリギリまで悩んで佐藤さんにお願い出来たのがすごく良かったなと改めて思っています。自身の過去についてスッキリしないものを抱えている主人公は横山を強く反映した人物でもあるのですが、横山の考えや感情をしっかりと受け止めて下さり、自分のものとして表現して頂いたその姿勢に、とても感謝しています。 スタッフ達と年が近いということもあり、彼らが卒業した後も繋がりがあったりして、その辺りのことも嬉しいなぁと。

こうやって書いてみると、最初は意識してなかった、と書いたものの(実際そうなんですが)、10周年記念らしいキャスティングになったな、と今では思います。撮影も(まぁ、大変なことは色々ありましたが)大きなトラブルなどなく進んだし、編集・宣伝・公開も楽しく進めることが出来たし、お陰様でご覧になった皆さんからの評判も上々だったし、東京以外の場所でも上映することが出来たし(名古屋・京都・大阪で上映しました)、色んなことを経験させてもらった10作品目でした。

映画の内容で言うと、テーマの一つになっている「過去との向き合い方をどうするか?」というのは、多かれ少なかれ誰にもあることで、例えば大きなことで言うと自分自身の出自のこととかもあるだろうし(国・人種・ジェンダーなどなど。過去、と一括りにするにはちょっと大きすぎる気もしますが)、もう少し身近なことで言うと、恋人の過去の相手を知りたいかどうか?とかもあるだろうし、そういった普遍的なテーマを、横山自身の感情というすごく小さな個人的なものを突き詰めて描いていく、という面では、とてもトリスタらしい作品になったのかなと思っています。 あ、そういえば、スタッフのKくんは企画開発にも参加してたんですが、その面談の時に「彼女の過去が気になって別れた」的なことを話してたなぁ。どうでもいいことをふと思い出してしまいましたが(笑)。

パッと見ると少し重いテーマを扱った作品にも見えますが、横山の元々の性格や出演者の皆さんの演技によって、軽やかな映画に仕上がっています。ぜひこの機会にスクリーンでご覧頂けると嬉しいです。