<WAT 世界のアニメーションシアター> 開催中。

5/29(日)まで、下北沢トリウッドで<WAT 世界のアニメーションシアター>が開催中です。 『はちみつ色のユン』でご一緒したオフィスH・伊藤さんが、世界から集めた珠玉のショートアニメーション10作品を、A/Bプログラムに分けて上映しています。 『ユン』以前にも、WATの字幕制作やら上映素材の作成やらで伊藤さんとはご一緒していて、今回のような形での特集上映は久々に開催しているわけですけども、相変わらず面白い作品が多くて(毎年お気に入りの作品というのが何本か見つかる特集なんです)、せっかくなので各上映作品の感想を書こうかなと思います。

まず、WATの詳細はこちらの公式サイトをどうぞ。 http://www.wat-animation.net/

では、感想。

<Aプロ:いろいろな愛を描くアニメーション>

『ビトイーン・タイムズ』 パペットなのかな、と思ったら、3DCGのモデルにパペットのテクスチャを貼っつけて、みたいな感じですげー細かい所までこだわって作られてるらしいです。あやふやですんません。 日常をユーモアとファンタジーで切り取る視線が心地よくて、ほんわかした気分になる作品です。

『ちいさな芽』 アニメーションの魅力の一つに、ダイナミックなメタモルフォーゼの表現、ってのがあると思うんですけど、それが存分に楽しめる作品。しかもそれが、砂と油彩で描かれてる、っていうんだから、単純にすげーなーと。 HPとかにも書かれてますけど、絵本みたいで色彩豊かなアニメーションです。

『Otto - オットー』 Aプロの中ではこれが一番好き。少女には、いつもの一緒の”空想の中の友だち”=オットーがいて、(おそらく)不妊治療を受けている女性にはオットーの姿が見えて、どうしても子どもが欲しいその女性がある行動に出る…、って感じのお話なんだけど、オットーはその二人にしか見えないわけですよ。空想の友だち、だから。僕ら観客にも見えない。でもちゃんと、オットーが”いる”ように感じられて、そこがアニメーションならではなんだろうなぁ、と。 おそらく実写だと、変に生々しくなっちゃうような気がする。そういう意味では、手法と主題がカチッと合った作品なのかなと思います。

『ギーダ』 ある女性の、”冒険”のお話、なんだけど、とにかく画が綺麗。色は単色というか、それほど多くの色を使ってる感じではないんだけど、画の「線」がホントに綺麗で、その動きに魅了されちゃう作品。 「動く絵画」みたいな手法で表現される女性の身体が、しわとかもあったりするんだけど、”綺麗”なんだよね。そこが良いです。

『真逆のふたり』 学校の卒業制作でありながら、オスカーを受賞した、っていう作品で、倦怠期の夫婦が一軒の家で「上下逆さ」の生活をしているというお話。 発想が面白いというのはもちろん、クレイで作られているストップモーションアニメの質も高いです。家の中の色んな小道具や装飾に味があるし、夫婦二人の造形も良い。観終わってほんわかするこの作品で、Aプロはおしまい。

<Bプロ:社会的視点を持つアニメーション>

『触感のダンス』 Bプロの中で一番好きな作品がこれ。聴覚障害を持つ二人の男女の”会話”が描かれてるんだけど、もうね、センスの塊ですよ。どこ切っても「センス」って書いてるような。わかりづらいけども。 まず、ダンスをアニメに写しとっているんで、人物の動き(=ダンス)が観ていて心地いいのと、それによって言葉なしで二人が”会話”している(もちろん手話も使うんだけど)のがとても良いし、絵のタッチも、繊細な音使いも素敵です。 「これぞアートアニメーション」って感じの雰囲気だし、ダンス(舞踊)が好きな人にもぜひ観て欲しい作品だなと思います。

サンティアゴ巡礼』 日本で言う「お遍路」みたいなもので、フランスからスペインの聖地を目指す巡礼路ってのがあって、そこが舞台になっている作品。主人公が、自身もそこを歩きながら、巡礼をしている様々な人を描写していくという感じ。 上に書いたメタモルフォーゼの面白さみたいなものもあるし、「風景のイメージ化」という意味では今回の10本の中では一番”ポップ”にアニメートされているのかなと思います。

『ホワイトテープ』 『ブラックテープ』 イスラエルの人権団体が撮影したビデオテープの上に手書きした、ってことで、その独特の質感が強く印象に残る作品。3部作の内の2本で、『ブラックテープ』は劇中の音楽(タンゴ)も良い感じ。 どちらも3分ほどですごく短いし、抽象的な表現なので何かを直接訴えかけてくるとは感じないかもしれないけど、その「余白」によって観ているこちらの思考を促す作品だと思います。

アフガニスタン - 戦場の友情』 アフガニスタンに駐留していたデンマーク軍のお話。実話を元にしているとのことで、現地警察とデンマーク軍の交流が描かれていきます。銃撃戦なんかもあるんで、ちょっとドキッとするかも。 で、「交流」とは書いたものの、彼らは言葉が通じないわけです。なので、観ていて感じるのは「分かり合う」ということよりも「分かり合えない」ということ。ラスト、何ともいえない後味になるのは、やっぱりそこが大きいのかなと。Bプロのトリです。

という感じで、僕自身も、WATがなければおそらく触れることがなかったであろう作品に触れることが出来、色々と感じるものがありました。やっぱりショートアニメーションって面白いなぁ、と。 元々海外のアニメーションが好きだ、という人はもちろん、そんなに興味がないや、って人にもぜひ観てほしい特集上映です。ぜひご来場下さいませ。


<WAT 世界のアニメーションシアター 2016> 2016年5月1日(日)~5月29日(日) ※平日火曜定休

5/1(日)~5/20(金) Aプロ 15:20/19:50 Bプロ 16:40/21:00

5/21(土)~5/27(金) Aプロ 14:00 Bプロ 15:10

5/28(土)5/29(日) Aプロ 13:30 Bプロ 14:40

<料金> 1プログラム:900円 2プログラム:1,600円 2プログラム(学生・シニア):1,300円

☆半券割あり! 同時期に上映している 『マンガをはみだした男 赤塚不二夫』 『チェコアニメーションの世界』の半券提示で ⇒ 各料金から100円引き


[youtube https://www.youtube.com/watch?v=-0izksamCtU&w=853&h=480]